私たちが普段何気なく飲んでいるお茶。実はお茶は淹れ方次第で、旨みや香りが引き立ち一段と美味しくなるのをご存じでしょうか。
日本茶は、香り、旨み、渋味、苦味のバランスが楽しめるのが特徴です。産地や品種の違いによって味や香りが変わってくるのはもちろんですが、淹れ方によっても味は大きく変わります。美味しいお茶を淹れるには、茶葉の特徴をうまく引き出すことが大切です。
一概に「日本茶」といっても、その茶葉の種類は様々。それぞれの茶葉には、魅力や特徴、また違う美味しさがあって、淹れ方も異なってきます。
このコラムでは、日本茶の代表的な茶葉の種類から、それぞれに適した淹れ方などをご紹介します。普段飲んでいるお茶との違いを楽しみ、ほっと一息、美味しいお茶を堪能してみてください。
目次
種類や個性に適したお茶の淹れ方
前述したように、一言にお茶といっても、種類や個性も様々です。ここではまず、それぞれのお茶に適した淹れ方をご紹介していきます。
普通煎茶・深蒸し煎茶
普通煎茶は、日光を遮断せず栽培し、茶葉を蒸して乾燥させるという、最も一般的な製法で作られています。
深蒸し煎茶は、普通煎茶よりも約2倍近い時間をかけて茶葉を蒸して作ったお茶のことをいいます。味や緑の水色(すいしょく)が濃く、青臭さや渋みがないのも特徴です。
現在煎茶は、日本茶の生産量のうち約8割を占めるといわれています。緑茶の中でも最も飲まれている代表的なお茶です。
普通煎茶、深蒸し煎茶の淹れ方
- 湯呑みにお湯を8分目ほど入れて、少し冷まします。(70℃から90℃くらい)
- 茶葉を急須に入れます。
- お湯が冷めたら急須にそそぎ、浸出するのを待ちます。
- お茶を濃淡のないように均等にそそぎ、最後の1適まで絞りきります。
爽やかな香りと、旨み・甘味・渋味があるのが煎茶の特徴。それらを充分に引き出せるよう低温で淹れます。お湯の温度は上級茶で65~70℃、中級煎茶で80℃くらいが適しています。二煎目も美味しく淹れるためには、一煎目を注いだあとの急須の中にお湯を残さないのがポイントです。
番茶・ほうじ茶・玄米茶
番茶は諸説ありますが、「番外茶」が名前の由来とされ、日本茶の主流から外れたお茶のことをいいます。遅い時期に摘むお茶という意味での「晩茶」からきているなどの説もあるといわれます。地域によって製法が違うため、水色(すいしょく)が緑色や茶色のものあります。
ほうじ茶は、煎茶や茎茶、番茶などを焙(ほう)じて製造したお茶のことをいいます。高温で焙煎するため水色(すいしょく)は茶色で、香ばしくさっぱりとした味わいが特長的です。
玄米茶は、うるち米を精米し蒸して炒ったものに、番茶や煎茶などを同量加えたお茶のことをいいます。炒った米の香ばしい香りは、ほうじ茶の香ばしさとはまた違う味わいとなっています。
番茶・ほうじ茶・玄米茶の淹れ方
- 茶葉を急須に入れます。
- 熱湯を急須にそそぎ入れます。
- お茶を濃淡のないように均等にそそぎ、最後の1適まで絞りきります。
渋みや旨み成分がもともと少ないため、煎茶とは違い高温で淹れて香ばしさを楽しみましょう。すっきりとした味や香りが特徴の番茶や焙じ茶は、熱い湯を急須(または土瓶)に直接そそぎ、30秒くらい経ったら注ぎ分けてください。
玉露
玉露は、収穫前に20日間以上寒冷紗などで日光を遮り栽培して製造したお茶をいいます。こうすることでクロロフィールが増加するとともに、光合成によりうまみ成分であるアミノ酸がカテキンに転化されないため、とろりとした口当たりの良い、濃く深い甘みが出るのが特徴です。
玉露の淹れ方
- 急須にお湯をそそぎ、冷まします。
- 急須のお湯を湯呑みの7分目ほどまでそそぎ、さらに冷まします。この時点で急須に残ったお湯は捨てます。
- 茶葉を急須に入れます。
- 湯呑みのお湯を急須に入れ、浸出するのを待ちます。
- お茶を濃淡のないように均等にそそぎ、最後の1適まで絞りきります。
玉露は低温でじっくりと旨みを引き出しましょう。甘くまろやかな味わいと豊潤な風味が特徴の玉露は、特有の旨みを出すため、沸騰させてから50℃まで冷ました湯で、ゆっくりと淹れるのがポイントです。二煎目は少し熱めの湯で風味の変化を楽しむのもよいでしょう。
お茶を淹れるときの水とお湯の温度
美味しいお茶を淹れるには、使用する水とお湯の温度がとても重要です。ここでは使用する水と温度に関して、おさえておいていただきたいポイントをご紹介します。
水道水は沸騰させてから使用
水道水には塩素が含まれているため、必ず沸騰させ揮散させてから使用しましょう。ミネラルウォーターの場合は、お茶を淹れるのに適した微酸性の軟水が望ましいです。カルシウムやマグネシウムを多く含む硬水は、お茶の成分と反応することにより、お茶本来の旨みや香りが損なわれてしまうため、軟水をおすすめします。
うま味を引き出したい場合は低温、香りを楽しみたい時は高温で
渋みを抑え、旨みを引き出したい煎茶や玉露の場合は、お湯の温度は低温に。香りを楽しみたい番茶やほうじ茶、玄米茶の場合は、高温のお湯を使用し淹れてください。また、渋い煎茶が好みの方や、緑茶の健康成分であるカテキンを効率的に摂取したいといった場合は、80度以上の高温のお湯で淹れるのをおすすめします。
まとめ
今回はお茶の種類に適した美味しい淹れ方などをご紹介しました。
日本茶は茶葉の種類だけでなく、温度や浸出時間によっても味わいが大きく変わります。淹れ方の基本を知り、ご自身の好みのお茶の淹れ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
ぜひ日常に取り入れ、お茶それぞれの持つ個性を存分に引き出し、美味しいお茶を味わうひとときを楽しんでみてください。